俺をどうしようというのだ? 打ちかかって来るなら来てみろ、俺は笑ってやらあ!
その時俺は、どんなことを考えたか自分でもよくは知らなかった。けれどただ、俺は非常に自由な力強い気になったのだった。何でも出来る雑多な力が、自分のうちにうごめいてるのを感じたのだった。そして輝かしいような気のする額を、汚い小さな卓子の上に伏せて、長い間我を忘れて考え込んでいた。
何だかあたりがざわざわするようなので、ふと我に返ると、丁度写真の代り目の休憩時間だった。四五人の者が喫煙所へはいって来た。俺は立上って、喫煙所から出で、活動小屋から外に出てしまった。
少し可笑しいぞ、と自分で思うくらいに俺は興奮していた。足が軽いし寒い空気が快いし、胸の奥まですーっと風が流れ込むし、ぱっとした街路の光までが物珍らしかった。こいつは猶更可笑しいぞ、と思ってるうちにぼーっとして、いつのまにか自分を取失ったような気持になった。だがやはりまだ晴々としていた。
それから俺は長い間歩き廻った。そしていつのまにか自分の家の近くまで来ていた。見覚えのある角の荒物屋に気がつくと同時に、誰かに後ろから肩を叩かれた――どっちが先だった
前へ
次へ
全46ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング