て彼女のことを頭の外に放り出した。郊外の野の上に、秋の晴々とした光りが一面に降り濺いでいた。私の心も晴々としていた。私はただみさ子のことを考えた。遠い昔の人ででもあるかのように、或る一定の距離を置いて、しみじみとしたやさしい眼差で、彼女は私を眺めていた。落付いた静かな微笑みが私の心に上ってきた。
それから間もなく、私はみさ子の小説を書いた。
底本:「豊島与志雄著作集 第二巻(小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22])」未来社
1965(昭和40)年12月15日第1刷発行
初出:「サンデー毎日」
1923(大正12)年7月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年8月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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