小さき花にも
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)小説4[#「4」はローマ数字、1−13−24]
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すぐ近くの、お寺の庭に、四五本の大きな銀杏樹がそびえ立っている。そばへ行って調べてみると、三本で、それが見ようによって、四本にも五本にも見える。こんもり茂っているのだ。その樹に、雀がたくさん巣くっている。朝早くから起きて、ピイチク、チュクチュク、ピイチク、チュクチュク、騒がしいったらない。朝日の光りがさしてくると、ぱっぱっと、一群れずつ飛び立ち、四散して、どこかへ行ってしまう。そして夕方また帰ってくる。何をしているのか、ピイチク、チュクチュク、ピイチク、チュクチュク、騒ぎまわって、薄暗くなるとひっそりしてしまう。
御近所で、たいへん迷惑してる家もある。私の家では、却ってそれを利用している。朝は眼覚時計の代りとなるし、夕方は終業の鐘の代りとなる。
お父さんが、中風でぶらぶらしていらっしゃるものだから、皆で働いた。御仕立物
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