私事、この度広島へ行くことに致しました。依子さんのことをお頼み致します。昨日瀬戸様へお目にかかりまして、無事に皆様からかあいがっていただいていることを承りまして、涙が出るほどうれしく存じました。永井が私へいろいろいやなことをすすめますけれど、私はだんじてそんな悪いことを致したくはございません。広島にいとこがございますので、相談致しますと、すぐ来いといってきました。手びろく乾物屋を致して居ります。今晩たつことに致しました。一度お伺いしたいと存じましたが、依子さんのために悪いと思いまして、このままたちます。もし永井が参りまして、何かと申しましても、何にも知らないとおっしゃって、相手になって下さいますな。お願い致します。依子さんのことをお頼み致します。お身体御大切にあそばしませ。皆々様へよろしく申上げます。御恩のほど一生わすれは致しません。広島からお手紙を差上げてもよろしゅうございましょうか。皆々様御身体御大切に御願い致します。

 彼は涙が出て来るのを、じっと我慢した。兼子が何か云おうとするのを押し止めた。依子がこちらを見ていたからであった。彼は依子の目と耳とを恐れた。
 依子は向うの隅
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