んなに誉めていいものでしょうか。
D女――わたくし、ただ一つ心に咎めることがございます。もうだいぶ前のことで、たった一度でしたけれど、田宮さんからキスされました。その時、田宮さんはひどく酔っていらっしゃいましたけれど、それでもわたくしの方では、心に咎めて、長い間悩みました。そして、そのことをあなたにお打ち明けしたら、気が静まるだろうと思いまして、恥をしのんで申上げることにしました。
E女――田宮さんは、わたしは昔から懇意なんですが、始末のわるいひとでしてね。いつものらりくらりしていて、瓢箪鯰で、つかまえどころがありません。こちらから何を言っても、すべて馬耳東風ですからね。あんなひと相手では、あなたも気骨が折れることでしょう。ひとつ、尻尾をつかまえて、ぎゅーっと締め上げてやりなさるが、宜しいですよ。
F男――あなたは用心なさらなければいけませんよ。田口というひとを御存じでしょう。あの田口が、言っていました。久子さんと田宮さんのことでは、久子さんの方に、どうも色慾二道の気味合いがあるようだと。これは聞き捨てならないじゃありませんか。それとも、あなたが田宮さんから、なにか品物を貰うとか
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