手品師
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)手品師《てじなし》が
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一人|微笑《ほほえ》み
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「使っていたって 一生」はママ]
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一
昔ペルシャの国に、ハムーチャという手品師《てじなし》がいました。妻も子もない一人者で、村や町をめぐり歩いて、広場に毛布を敷き、その上でいろんな手品を使い、いくらかのお金をもらって、その日その日を暮らしていました。赤と白とのだんだらの服をつけ三角の帽子をかぶって、十二本のナイフを両手で使い分けたり、逆立《さかだ》ちして両足で金の毬《まり》を手玉《てだま》に取ったり、鼻の上に長い棒を立ててその上で皿廻《さらまわ》しをしたり、飛び上がりながらくるくるととんぼ返りをしたり、その他いろいろなおもしろい芸をしましたので、あたりに立ち並んでる見物人から、たくさんのお金が毛布の上に投げられました。けれどもハムーチャは、そのお金で酒ばかり飲んでいましたので、いつもひどく貧乏でした。「ああああ、いつに
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