。封筒の中の金が、二十円や十円や五円などごたごたした紙幣《さつ》になってるのが、ぱっと頭に映ってきて、それを寄せ集めた時の惨めさが心にきたからだ。僕が吉岡君の前にじかに出せなかったのも、今から考えると、そんなことも原因だったような気がする。」
「それじゃ君、そんなに無理して返さなくともよかったじゃないか。」
 河野はまた左手で※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]をきゅっとやった。
「そう云えばそうなんだが……いや、そこがやはり吉岡君の誤解の重な原因だろう。僕は可なり金銭には無頓着で、随分友人の金を借りっ放しにしてるのもある。然しどういうものか、吉岡君から借りたのだけは、妙に頭にひっかかっていた。一番苦しい時で一番有難かったので、強く頭に刻み込まれているせいかも知れない。然し僕は何も、吉岡君がいつ死ぬかも分らないから今のうちにって、そんな気持は少しもなかったのだ。あんまりひどい誤解だ。或は妻にはそんな気持が多少あったかも知れない。早くお返ししなければ済まないと始終言ってたから。然しそれは女のことだから、大目に見てやってもいいと思う。そして僕達は二人共、金を返せば恩義までも返してしま
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