いてみれば、なるほど、妻のやりそうなことだ。私は始めて微笑を浮べて、家に帰り、薄暗い中で猫をだいて寝そべった。
その、一人留守居の猫と、あの騒ぎの最中の妻の処置と、四辻で別れたベルギー婦人とが、震災当初の私のもっとも深い思い出である。その思い出が、十年後の今になっても、特殊の淡い哀愁で私の心を打つ。
底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2005年12月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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