ひともエキモスをうばいかえすとさわいでいます。――エキモスがむほんをたくらんでたということも、びんぼう人たちのところへ金貨がまきちらされるのを、ねたんでる者どもが、かってにこしらえた話です。――そして牢屋のほうでは、ふしぎにも、数かぎりない鳥や獣《けもの》がやってきて、牢屋から森まで、すっかりせんりょうしてしまっています……。
王さまは立ち上がりました。王子も立ち上がりました。すぐに馬をひきださせて、牢屋《ろうや》のほうへかけさせました。それを気づかって、大臣はおおくの兵士をつれて、あとにしたがいました。
きてみると、ほんとでした。牢屋のまわりの森のなかは、鳥や獣《けもの》でいっぱいでした。鷲《わし》や狼《おおかみ》や獅子《しし》のようなおそろしいのもまじっています。馬はおどろいてはねあがりました。王さまも王子も大臣も兵士たちも、馬からとびおりました。牢屋の窓には、にこにこしてるエキモスの顔がみえます。けれども、鳥や獣のためにちかよれませんでした。
そこへ、エキモスをうばいかえそうとして、たくさんの人民たちがやってきました。王さまはすぐに、エキモスをゆるすということをふれさせまし
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