黄金《こがね》になっています。
 エキモスはびっくりして立ち上がりました。いくつ小石をいれても、とりだすと黄金になっています。それがおもしろくて、やたらに小石を黄金にしては、四方《しほう》になげちらしました。
 ――ふしぎな皮袋だ。あの金色の鹿の毛皮でこしらえたのだ。
 それさえあれば、都にいっても不自由はしません。エキモスは都にいくことにきめました。
 ふしぎな皮袋とふしぎな葦笛《あしぶえ》……。エキモスは、にわかに元気がでてきました。そして都をさしてやっていきました。

      三

 まだ汽車や飛行機のないころのことです。エキモスは、いく日かのんきな旅をして、ようやく都につきました。
 大きなりっぱな家が、たちならんでいました。うつくしいものが、店いっぱいにかざってありました。そしてなによりも、人間が多いのにエキモスはびっくりしました。蟻《あり》のすをつついたように、たくさんの人がいそがしそうにあるきまわっていました。
 夕方になると、いちめんに灯がともって、町はいっそうきれいになり、うつくしくきかざった人が、いっそう多くなりました。
 エキモスははらがすいてきましたので、あ
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