みな黄金《おうごん》にしてしまいました。くたびれてくると、大臣をよびました。つぎには、ごてんじゅうの役人をよびました。小石や銅貨をはこぶもの、それを皮袋《かわぶくろ》にいれて黄金にするもの、その黄金を部屋のすみにつみかさねるもの、おおさわぎでした。黄金がだんだんふえてゆくのをみて、みんなむちゅうになりました。
 一日たちました。一つの部屋が黄金でいっぱいになりました。
 二日たちました。二つの部屋が黄金でいっぱいになりました。
 王さまに、エキモスとおなじくらいな年ごろの王子がありました。王さまはじめみんなが、黄金をこしらえて、むちゅうになってるのをみて、かなしそうにいいました。
「そんなことをして、なにになりますか」
 でも、だれもへんじをしませんでした。
 三日……四日……五日たちました。五つの部屋が黄金でいっぱいになりました。
 王子はいいました。
「そんなことをして、なにになりますか」
 だれもへんじをしませんでした。
 六日たち、七日たちました。七つの部屋が黄金でいっぱいになりました。
 王子はかなしそうにいいました。
「そんなことをして、なにになりますか」
 だれもへんじをしませんでした。がこんどは、みんな、たがいに顔をみあわせました。そしてため息をつきました。くたびれていました。なんだかさびしくなっていました。七つの部屋にいっぱいの黄金《おうごん》の山をみて、どうしていいかわからなくなってきました。
 王子はいいました。
「石ころをつんでるのと、おんなじではありませんか」
 じっさい、黄金ばかりこしらえて、なにになるんでしょう。こうなると、石ころをつんでるのとおなじでした。これまであんなにとうといものとおもっていた黄金も、七つの部屋いっぱいほどになると、どうにもしようがありませんでした。
 ――ばかなことをしたものだ。
 そうかんがえて、王さまは大臣のほうをみました。大臣も王さまのほうをみました。二人ともこまってしまいました。
 そして、八日めの朝になると、七つの部屋いっぱいの黄金をまえにして、王さまも大臣の役人たちも、ただため息をつくばかりでした。
 そこへ、いちどに、いろんな知らせがまいりました。――人民たちは、エキモスが牢《ろう》にとじこめられて、いよいよ今日は島ながしになるんだということを、いつのまにかききだして、たいへんさわぎたっています。ぜ
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