返っているのである。
 この話、誰もすっかり信ずる者はなさそうだが、然し当事者たるその家の人たちは、他に疑念のもちようがないので、不思議なまた不気味な鯰として、今でも時々池をのぞいている。
 これは鯰のことだが、人間の肉体にだって、これ以上のことが起らないとは限らない。死後二十四時間以内には、死体を取納めていけないことになっているが、死体の命の長短を測定出来たら、どんなことになるか分ったものではない。



底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社
   1967(昭和42)年11月10日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2006年4月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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