ので、日曜日がまわってきても、愉快な気晴しをする余裕はとてもなく、寝坊と夢想と散歩と活動写真くらいで、一日ぐずぐずに送ってしまう。一体何のために自分は生きてるのか? それを思うと、もう何もかも、自分自身も世の中も、つくづく嫌になってくる。そして一番いけないのは、こういう生活が、毎日同じように、際限もなく、末の見込や希望が一つもなく、ただだらしなく繰返されることである。そんなことを考えまわすと、息が苦しくなってきて、今にも窒息しそうな気持さえする。このままで年を取っていったらどうなるのか? 自分の若い生命はどうなるのか? せめて、大空の下で大地の上で、大きく息をでもつけたら……。然し凡てが狭苦しくて惨めである。風通しも日当りも悪い三畳の室、それから外に出ても、軒並に切取られた狭い空、薄濁りのした空気、その空気を通してくる蒼ざめた日の光、そしていつも、満員の電車、人の群、それからまた、緑の木の葉一つ見えない、地下牢みたいな頑丈な檻――数字ばかりが積み重ってる会社の室。凡てのものが、私の精神をばかりでなく、私のこの肉体をも、蒼白く萎びさしてしまう。ああせめて、力一杯にぶつかってゆけるものでも
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