しきれないで声に出して笑ってのけて、僕は元気よく立上った。
「こんどは僕も入れてくれ。三人撞でいこうよ。」
木谷はまるい眼をした。が佐藤は、黒い額と眼とを光らして、天井をでも仰ぐような恰好に首を反らせた。
「宜しい、やりましょう。」
立上ったとたんに、窓から覗いてみると、外はやはり濛々とした霧だった。
その時は実際、阿亀の面が本当に笑っていた――と佐竹謙次郎はいうのである。
底本:「豊島与志雄著作集 第二巻(小説2[#「2」はローマ数字、1−13−22])」未来社
1965(昭和40)年12月15日第1刷発行
初出:「文芸春秋」
1925(大正14)年10月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年10月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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