たがいのほんとうの感情に急には気づかなかった。二人は初め嘲《あざけ》り気味の眼つきで見合った。二人はたがいにあまり似寄っていなかった。一方は水銀であり、一方は眠ってる水だった。しかし長くたたないうちに、水銀はもっと穏やかなふうをしようとし、眠ってる水は眼を覚ましてきた。ジョルジュはオーロラの身装《みなり》やイタリー趣味を非難した――細やかな色合いのやや乏しいこと、けばけばしい色彩を好むことなど。オーロラは揶揄《やゆ》するのが好きで、ジョルジュの性急なやや気取った話し振りを、面白そうに真似《まね》てみせた。そしてたがいに嘲りながら二人はうれしがっていた……。でもそれは嘲笑《ちょうしょう》だったろうか、あるいは談話だったろうか? 二人は相手の欠点をクリストフに話すことさえあった。するとクリストフはそれに反対を唱えないで、意地悪にも小さな矢の取次をした。二人はそれを気にかけないふうをした。しかし実はどちらもひどく気にかけてることがわかった。二人は自分の憤懣《ふんまん》を隠すことができないで、ことにジョルジュはそうで、つぎに出会うとすぐに激しい小競合《こぜりあ》いをやった。しかし軽い傷しかつか
前へ
次へ
全340ページ中286ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング