や、彼は自分の周囲に見てとった、眩《まぶ》しい光輝に貫かれたる暗黒の集団を、父親が焦慮しながら迷い歩いた、知識と無識と害悪な真理と矛盾的な誤謬《ごびゅう》との堆積《たいせき》を。しかし彼はまた同時に、自分の手中にある一つの武器、オリヴィエがかつて知らなかった武器、すなわちおのれの力を、意識したのだった……。
その力はどこから彼に来たのか?……それこそ、疲れきって眠っていたのが春の渓流のように満ちあふれて眼覚《めざ》めてくる、民族の復活の神秘である……。彼はその力をどうするつもりだったか? 近代思想界の紛糾した茂みを探険することにみずから使うつもりだったろうか。否彼はそういう茂みに心ひかれなかった。彼はそこに待ち伏せてる危険の脅威を重々しく身に感じていた。彼の父はそれらの危険に圧倒されたのだった。その経験を繰り返して悲劇の森にはいり込むよりはむしろ、その森に火を放ってしまいたかった。オリヴィエが心酔していた書物、知恵もしくは聖なる狂愚のあれらの書物を、彼はただちょっとのぞき込んだばかりだった。トルストイの虚無的な憐憫《れんびん》、イプセンの陰鬱《いんうつ》な破壊的高慢、ニーチェの熱狂、
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