ジョルジュ・ジャンナンは母の肉体に魅せられていた。彼女の声や身振りや動作や容色や愛撫《あいぶ》を好んでいた。しかし精神的には彼女と別人であることを感じていた。彼女がそれに気づいたのは、彼が初めて青春の気にそそられて彼女から遠く逃げ出したときにであった。そのとき彼女は驚きまた憤って、彼が自分から遠ざかったのは他の女の影響のせいだとした。そうしてその影響をへまに追いのけようとしながら、ますます彼を遠ざけるばかりだった。が実際においては、二人はやはり相並んで生活をしていて、どちらも異なった事柄に心を奪われてはいたが、しかし皮相な同感や反感をたがいに通じ合っていて、二人を隔ててる事柄をよく見てとってはいなかった。そしてそういう感情の共通からは、子供(まだ女の香《かお》りに浸ってる模糊《もこ》たる存在)から一個の男子が現われてきたときには、もう何にも残らなかった。ジャックリーヌは苦々《にがにが》しげに息子《むすこ》へ言った。
「あなたはだれの血を受けたんでしょうね? お父さんにも私にも似ていません。」
 そういうふうにして彼女は、二人を隔ててるものをことごとく彼に感じさせてしまった。彼はそのため
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