なかった。たがいに相手を害するのを恐れていた。そして攻撃してくるのはいかにも親愛な手だったので、相手に与える打撃よりも相手から受ける打撃のほうをうれしがった。二人は物珍しげに観察し合って、相手の欠点を捜しながらもその欠点に心ひかれていた。しかしそうだとは認めたがらなかった。どちらも、クリストフと二人きりになると相手を我慢のならない人物だと言い張っていた。それでもやはり、クリストフが二人を会わしてくれる機会をのがさずに利用していた。
 ある日オーロラはクリストフのところに来ていて、つぎの日曜の午前にまた来ると言っていた。――そこへジョルジュが、例のとおり風のように飛び込んできて、つぎの日曜の午後に来るとクリストフに告げた。その日曜の午前中、クリストフはオーロラから無駄《むだ》に待たされてた。ジョルジュが指定した時間になって、彼女はようやくやって来ながら、もっと早く来るはずだったのを邪魔されたと詫《わ》びた。かわいい口実をこしらえていた。クリストフは彼女の罪のない策略を面白がって、彼女へ言った。
「それは残念だった。ジョルジュに会えるところだったのに。ジョルジュが来て私たちはいっしょに昼飯を食べたよ。彼は午後まで残ってることができなかったんだよ。」
 オーロラはがっかりして、もうクリストフの言葉に耳を貸しもしなかった。クリストフは上機嫌《じょうきげん》に話をした。彼女は気のない返辞ばかりしていた。クリストフを恨めしく思いがちだった。そこへ呼鈴が鳴った。それはジョルジュだった。オーロラはびっくりした。クリストフは笑いながら彼女をながめた。彼女は彼からからかわれたことを悟った。笑って顔を赤めた。彼は意地悪く指先で彼女を嚇《おど》かした。不意に彼女は情にかられて彼のところへ駆け寄って抱擁した。彼はその耳にイタリー語でささやいた。
「お茶目、曲者《くせもの》、お転婆《てんば》……。」
 すると彼女は彼を黙らせるために、彼の口へ手を押し当てた。
 ジョルジュにはそれらの笑いや抱擁の訳が少しもわからなかった。彼の驚いたやや焦《じ》れったげな様子に、二人はなお愉快になった。
 かように、クリストフは二人の若者を接近させようとしていた。そしてそれに成功したときには、みずから自分を責めたい気になった。彼は二人を同じように愛していた。しかしジョルジュのほうをきびしく批判して、その弱点を知り
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