はおとなしく二人の言葉に耳を貸し、やさしくからかっていた。呼鈴が鳴った。ジョルジュが行って扉《とびら》を開いた。一人の下男がコレットのもとから手紙をもって来たのだった。クリストフは窓ぎわに行ってそれを読んだ。二人の若者はまた議論を始めた。こちらに背を向けてるクリストフには眼も配らなかった。クリストフは二人の気づかないうちに室から出て行った。二人はやがてそれと知ったが別段驚かなかった。しかし彼があまり長くもどって来ないので、ジョルジュは隣室の扉のところへ行ってたたいてみた。返辞がなかった。でもジョルジュは彼の風変わりなことを知っていたので放っておいた。数分間たってクリストフは出て来た。たいへん穏やかなたいへん疲れたたいへんやさしい様子をしていた。二人を置きざりにしたことを詫《わ》び、先刻途切らした話をまたやり始めて、二人の心配事を慰めてやり、二人のためになることを言ってやった。二人はなぜともなく彼の声の調子に心を動かされた。
二人は帰っていった。ジョルジュはその足ですぐにコレットのところへ行った。するとコレットは涙を流していた。彼女は彼の姿を見るとすぐに、駆け寄って来て尋ねた。
「どんなふうにあの人は辛抱なすったの? お気の毒に! ほんとに恐ろしい!」
ジョルジュには訳がわからなかった。コレットは彼に、グラチアの死亡をクリストフへ知らしたのだと告げた。
彼女はだれへも別れを告げる隙《ひま》もなくこの世を去った。数か月以来彼女の生命の根はほとんどみな抜き取られていた。彼女を吹き倒すにはちょっとした風で足りた。彼女は流行性感冒で亡くなった。その病気がぶり返した前日、クリストフからよい手紙を受け取った。その手紙にすっかり感動させられた。彼を自分のそばに呼び寄せたかった。すべて他のことは、二人を隔ててるすべてのことは、みな虚偽であり悪であると感じた。彼女はごく疲れていたので、彼へ手紙を書くのを翌日に延ばした。ところが翌日も床から出られなかった。彼女は手紙を書きかけたが書き終えなかった。眩暈《めまい》がして頭がふらふらしていた。そのうえ彼女は自分の病気を知らせるのを躊躇《ちゅうちょ》した。クリストフの心を乱すのがはばかられた。クリストフはちょうどそのとき、ある交響的合唱曲の下稽古《したげいこ》にかかっていた。それはエマニュエルの詩に基づいて作曲したものだった。その主題が
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