をしばしば聞いたので自分もその話をし、音楽の主都[#「音楽の主都」に傍点]に起こってることはなんでも知っていた。娘は平凡な生活をしていて、毎日音楽の稽古《けいこ》を授け、また時とすると音楽会を催したが、だれからも注意されなかった。彼女はいつもおそくなって、徒歩か乗合馬車かで帰って来、すっかり疲れはててはいたが、機嫌《きげん》はよかった。そして、いろんなことをしゃべりながら、よく笑いながら、一文にもならないのに歌をうたいながら、元気に音階を組み立てたり、帽子を繕ったりした。
彼女は生活のために害されてはいなかった。自分の努力で得たわずかな安楽の価を知っていた――ちょっとした楽しみの喜びを、自分の地位や才能がごく少しずつ向上してゆく喜びを、よく知っていた。前月よりは五フランばかり多く収入があっただけでも、数週間努力していたショパンの一節をうまく演奏し得ただけでも、彼女はうれしがっていた。彼女の勉強は過度でなかったから、ちょうど彼女の能力に適合していて、相当な摂生法のように彼女を満足さしていた。演奏し歌い稽古を授けることは、尋常に規則的に活動力を満足さしたという快い感じを彼女に得させ、また
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