うる》わしさ、その弱々しい信頼的な性質、などはすぐに彼女をひきつけたのだった。――(母性的な性格は自分を頼りにする者からひきつけられる。)――その後彼女は、オリヴィエの夫婦生活の苦しみを知ったために、危険な憐《あわ》れみの念を彼にたいして起こした。もちろんそういう理由ばかりではなかった。一人の者が他の者に熱中する理由を、だれがすっかり言い得よう? どちらもなんでもないことがしばしばである。そのときの場合によるのであって、用心していない人の心は、途上に横たわってる最初の愛情に、ふいに引き渡されてしまうことがある。――セシルは、もはや自分の愛に疑いの余地がなくなると、その愛を罪深い不条理なものだと考えて、それを抜き去ろうと勇ましく努力した。彼女は長くみずから自分を苦しめた。心の傷を癒《いや》すことができなかった。だれも彼女の心中に起こってる事柄を気づかなかった。彼女は幸福な様子を雄々しくも装っていた。ただアルノー夫人だけがその苦しみを察していた。セシルはやって来ては、彼女の花車《きゃしゃ》な胸に、首筋の頑丈《がんじょう》なその頭をもたせかけた。そして黙って涙を流し、彼女を抱擁し、それから笑
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