植えられるのを昔彼は見たのだが、それがすっかりあたりを占領して、古い樹々《きぎ》を窒息さしていた。ケリッヒ家の庭をめぐらしてる壁に沿って行くと、悪戯《いたずら》っ児《こ》の時分にその広庭をのぞき込むためよじ登った、見覚えのある標石があった。そして彼は、その通りも壁も庭も非常に小さくなったのに驚かされた。正面の鉄門の前で彼はちょっと立ち止まった。また歩き出すときに馬車が一つ通った。彼はなんの気もなしに眼をあげてみた。生き生きした太った快活な若い婦人の眼にかち合った。向こうは彼を不思議そうに見調べていた。と彼女は驚きの声をたてた。彼女の合図で馬車は止まった。彼女は言った。
「クラフトさん!」
彼は立ち止まった。
彼女は笑いながら言った。
「ミンナですよ……。」
彼は初めて会った日とほとんど同じくらいに心を躍《おど》らして(第二巻朝参照)、彼女のそばに駆け寄った。彼女は一人の紳士といっしょだった。背が高く、でっぷりして、頭が禿《は》げ、得意げにぴんとはね上がった口髭《くちひげ》をもっていた。その男を彼女は、「高等法院顧問官フォン・プロムバッハ」――彼女の夫――だと彼に紹介した。彼女は彼
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