ストフはたいへん喜んだ。けれど別に不思議がりはしなかった。自分にたいするジャックリーヌの不正な気持は長くつづくものではないと、彼は考えていたのだった。老祖父の嘲弄《ちょうろう》的な言葉をいつも好んでみずから繰り返していた。
 ――おそかれ早かれ、女には善良な時がやってくるものだ。気長くその時を待っていさえすればよい。
 で彼はオリヴィエの家へ出かけていった。そして喜んで迎えられた。ジャックリーヌは彼にたいしてたいへん注意深い態度を見せた。生来の皮肉の調子を避けて、クリストフの気にさわりそうなことは言わないように用心し、彼の仕事に同情を示し、真面目《まじめ》な話題について賢い口をきいた。クリストフは彼女が一変したのだと思った。しかし彼女は彼の気に入らんためにのみ一変したのだった。彼女はクリストフと世に流行《はや》ってる女優との情事を耳にしていた。その話はパリーじゅうの噂《うわさ》の種となっていた。そしてクリストフは、まったく新しい光に包まれてるように彼女には思われた。彼女は彼にたいする好奇心にとらわれた。彼に会ってみると、以前よりはずっと多く同情がもてた。彼の欠点さえも面白く思えないでは
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