鍵《かぎ》を一つ渡して、いつでも好きなときにはいれるようにしてやった。実際彼女は一度ならず、クリストフがいないときにやって来た。そしてテーブルの上に、菫《すみれ》の小さな花束を置いたり、または紙にちょっと、走り書きや素描や漫画を、書き残していった――立ち寄ったしるしに。
そしてある晩、彼女は芝居の帰りに、また楽しい話を繰り返すつもりで、クリストフのところにやって来た。彼は仕事をしていた。二人は話を始めた。しかし二、三言話し出すや否や、二人はどちらも、この前のようなやさしい気持でいないことを感じた。彼女は帰ろうとした。けれどもうおそかった。クリストフが引き留めたわけではなかった。彼女自身の意志が帰ることを許さなかった。二人はそのままじっとしていて、欲望が高まってくるのを感じた。
そしてたがいに身を任せた。
その夜以来、彼女は幾週間も姿を見せなかった。彼はその夜のために、数か月眠っていた情欲がふたたび燃え出して、彼女と会わずにはいられなかった。彼女の家へ行くことは断わられていたので、芝居へ行った。後ろのほうの席に身を隠した。愛情と感動とに燃えたっていた。骨の髄《ずい》までもおののい
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