…。」
しかしオリヴィエは、なおその他のものがなくてもやってゆける道を覚えていた。芸術もクリストフもなくて構わなかった。そのころ彼はもうジャックリーヌのことしか考えていなかった。
彼らの恋愛の利己主義は、彼らのまわりに空虚をこしらえ出していた。そして浅慮にも、将来の源泉をすべて焼きつくしていた。
交じり合った二人の者がたがいに相手を吸い取ろうとばかり考えてる、初めの間の陶酔……。身体と魂とのあらゆる部分で、彼らは触れ合い、味わい合い、たがいにはいり込もうとする。彼らは二人だけで、法則のない一つの世界をなし、恋に駆られた一つの渾沌《こんとん》界をなしている。そこでは混同し合った各要素が、たがいに見分けることをまだ知らず、たがいに争ってむさぼり食う。二人はたがいに相手のうちにあるすべてのものを歓び合う。相手もまた自分自身なのである。世界も今は何になろう? なごやかな逸楽の夢に眠ってる古《いにしえ》のアンドロジーヌのように、彼らの眼は世界に向かって閉じている。世界はすべて二人のうちにあるのである。
一様な夢の織り物をこしらえ出す昼と夜、美《うる》わしい白雲が、眩惑《げんわく》せ
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