雷を鳴らしていらっしゃるのが、意気地《いくじ》ないような、おかしいような気がします 私共のような[#「気がします 私共のような」はママ]鳥でさえ、高い山の上を飛び廻ってるのですもの、あなたも一つ奮発《ふんぱつ》して、国中で一番高い山の上に雷を落としてみられたら、いかがなものでしょう。それともあなたは、そんなに高い所へは昇れないとおっしゃるのですか」
 気の短い雷の神は、それを聞いてもうむかっ腹を立てて、いきなり立ち上がりました。
「よし、それではこれから、国中で一番高い山の上に、大空の上から雷を落としてみせるぞ」
「それは結構でございますな。謹《つつし》んで拝見《はいけん》いたしましょう」
 雷の神がうまく策略《さくりゃく》にのったので、禿鷹はしめたと思って微笑《ほほえ》みました。雷が落ちるのを見定《みさだ》めれば、どれが一番高い山だかすぐにわかるし、またそれで、今まで嘘をついた山の霊を、罰するわけにもなるのです。

      五

 そこで禿鷹《はげたか》は、ある高い山の上に飛び上がって、その頂《いただき》の岩の影から、四方を隈《くま》なくうかがい始めました。
 谷間から遠く低く平
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