ら?」
「閣下、利己心は世界の大法であります。日傭稼《ひようかせ》ぎの貧乏な田舎女《いなかおんな》は、駅馬車が通れば振り返って見ますが、自分の畑の仕事をしてる地主の女は、振り向きもいたしません。貧乏人の犬は金持ちに吠《ほ》えかかり、金持ちの犬は貧乏人に吠えかかります。みな自分のためばかりです。利益、それが人間の目的であります。金は磁石であります。」
「だから? 結局何ですか。」
「私はジョヤに行って住みたいと思っております。家族は三人で、私の妻に娘、それもごく美しい娘でございます。旅は長くて、金もよほどかかります。私は金が少しいるのでございます。」
「それが何で僕に関係があるんですか。」とマリユスは尋ねた。
 男は首飾りから首を差し出した。禿鷹《はげたか》のよくやる身振りである。そして彼はいっそう笑顔を深めて答えた。
「閣下は私の手紙を御覧になりませんでしたでしょうか。」
 それはほとんどそのとおりであった。実際、手紙の内容にマリユスはよく気を止めなかった。彼は手紙を読んだというよりむしろその手跡を見たのだった。何が書いてあったかはほとんど覚えていなかった。けれどもちょっと前から新しい
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