をまた閉ざし、そして呼鈴《ベル》を鳴らした。バスクが扉《とびら》を少し開いた。
「ここに通してくれ。」とマリユスは言った。
 バスクは案内してきた。
「テナル様でございます。」
 ひとりの男がはいってきた。
 マリユスは新たな驚きを覚えた。はいってきたのはまったく見知らぬ男だった。
 その男は、と言ってももう老人だが、大きな鼻を持ち、頤《あご》を首飾りの中につき込み、目には緑色の琥珀絹《こはくぎぬ》で縁|覆《おお》いした緑色の眼鏡《めがね》をかけ、髪は額の上に平らになでつけられて眉毛《まゆ》の所まで下がり、イギリスの上流社会の御者がつけてる鬘《かつら》のようだった。その髪は半ば白くなっていた。頭から足先まで黒ずくめで、その黒服はすり切れてはいるが小ぎれいだった。一ふさの飾り玉が内隠しから出ていて、時計がはいってることを示していた。手には古い帽子を持っていた。前かがみに歩いていて背中が曲がってるために、そのお時儀はいっそう丁寧らしく見えた。
 一目見ても不思議なことには、その上衣はよくボタンがかけられてるのにだぶだぶしていて、彼のために仕立てられたものではなさそうだった。
 ここにちょっ
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