いけない。」
 それでコゼットは多少地歩を失った。彼女は上手《うわて》に出るのをやめて、こんどはいろいろ尋ねるようになった。
「どうしてでしょう! 私に会うのに家で一番きたない室《へや》をお望みなさるなんて。ここはほんとにひどいではありませんか。」
「お前も知っ……。」
 ジャン・ヴァルジャンは言い直した。
「奥さんも御存じのとおり、私は変人だ、私にはいろいろ変わった癖がある。」
 コゼットは小さな両手をたたいた。
「奥さん! 御存じのとおり!……それもまた変だわ。どういうわけでしょう?」
 ジャン・ヴァルジャンは時々ごまかしにやる例の悲痛なほほえみを彼女に向けた。
「あなたは奥さんになることを望んだ。そして今奥さんになっている。」
「でもあなたに対してはそうではありませんわ、お父様。」
「もう私を父と呼んではいけない。」
「まあ何をおっしゃるの?」
「私をジャンさんと呼ばなければいけない、あるいはジャンでもいい。」
「もう父ではないんですって、私はもうコゼットではないんですって、ジャンさんですって。いったいどうしてでしょう。大変な変わりようではありませんか。何か起こったのですか。まあ
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