えんだな。」
 そして山分け[#「山分け」に傍点]という約束を忘れて、彼は全部取ってしまった。
 大きな銅貨に対しては彼もさすがにちょっと躊躇《ちゅうちょ》した。しかし考えた末それをも奪いながら口の中でつぶやいた。
「かまわねえ、あまり安すぎるからな。」
 それがすんで、彼はまた上衣の下から鍵《かぎ》を引き出した。
「さあ、お前は出なけりゃなるめえ。ここは市場のようなもんで出る時に金を払うんだ。お前は金を払ったから、出るがいい。」
 そして彼は笑い出した。
 彼がそういうふうに、見知らぬ男に鍵を貸してやり、その門から他人を出してやったのは、一殺害人を救ってやろうという純粋無私な考えからであったろうか。それについては疑いを入れる余地がある。
 テナルディエはジャン・ヴァルジャンに自ら手伝って再びマリユスを肩にかつがせ、それから、ついて来るように合い図をしながら、跣足《はだし》の爪先でそっと鉄格子《てつごうし》の方へ進み寄り、外をのぞき、指を口にあて、決心のつかないようなふうでしばらくたたずんだ。やがて外の様子をうかがってしまうと、彼は鍵を錠前の中に差し込んだ。閂子《かんぬき》はすべり、扉
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