市の」に傍点]泥濘《でいねい》こそ地の大法なり[#「こそ地の大法なり」に傍点]」と神秘な言葉を発した時、彼の心が考えていたのは、使徒や殉教者らが輩出したそれらの貧民や浮浪の徒やみじめな者らのことをであった。
苦しみそして血をしぼってるこの多衆の激怒、おのれの生命たる主義に反するその暴行、権利に反するその暴挙、などは皆下層民の武断政略《クーデター》であって、鎮圧されなければならないものである。正直なる者はそういう鎮圧に身をささげ、多衆を愛するがゆえにかえってそれと戦う。しかしながら彼は、対抗しながらもいかにそれを宥恕《ゆうじょ》すべきものであるかを感じ、抵抗しながらもいかにそれを貴《とうと》んでいることであろう! おのれのなすべきところをなしながら、足を引き止むるようなある不安な何物かを感ずる稀有《けう》な時期は、かかるところから到来する。人は固執する、固執しなければならない。しかし本心は満足しながらも悲しんでいる。そして義務の遂行のうちに、ある痛心の情が交じってくる。
直ちに言を進めるが、一八四八年六月の暴動は特殊の事実であって、ほとんど歴史哲学のうちにおいて他と同類に置くことので
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