は白服をまとい、大佐の肩章をつけ鉞《まさかり》で舗石《しきいし》に音を立てる案内人のあとに従い、魅せられてる見物人の人垣の間を進んで、両扉《りょうひ》とも大きく開かれてる教会堂の表門の下まで行き、再び馬車に乗るばかりになって、すべてが終わった時、コゼットはまだそれが夢ではないかと疑っていた。彼女はマリユスをながめ、群集をながめ、空をながめた。あたかも夢からさめるのを恐れてるがようだった。そのびっくりした不安な様子は言い知れぬ一種の魅力を彼女に添えていた。家に戻るために、彼らはいっしょに相並んで同じ馬車に乗った。ジルノルマン氏とジャン・ヴァルジャンとがふたりに向き合ってすわった。ジルノルマン伯母《おば》は一段だけ位を落とされて、二番目の馬車に乗った。祖父は言った。「これでお前たちは、三万フランの年金を持ってる男爵および男爵夫人となったわけだ。」コゼットはマリユスに近く寄り添って、天使のようなささやきで彼の耳根をなでた。「本当なのね。私の名もマリユスね。私はあなたの夫人なのね。」
 彼らふたりは光り輝いていた。彼らは、再び来ることのない見いだそうとて見いだせない瞬間にあり、あらゆる青春と喜悦とのまばゆい交差点にあった。彼らはジャン・プルーヴェールの詩を実現していた。ふたりの年齢を合わしても四十歳に満たなかった。精気のような結婚であって、そのふたりの若者は二つの百合《ゆり》の花であった。彼らは互いに見ることをせず、しかも互いに見とれ合っていた。コゼットはマリユスを光栄の中にながめ、マリユスはコゼットを祭壇の上にながめていた。そしてその祭壇の上とその光栄の中とに、ふたりは共に神となって相交わり、その奥に、コゼットにとっては霞《かすみ》のうしろに、マリユスにとっては炎の中に、ある理想的なものが、現実的なものが、脣《くち》づけと夢との会合が、婚姻の枕が、横たわってるのだった。
 過去のあらゆる苦しみは戻ってきて、かえって彼らを酔わした。苦痛、不眠、涙、煩悶《はんもん》、恐怖、絶望、それらのものも今は愛撫と光輝とに姿を変じて、まさにきたらんとする麗しい時間を更に麗しくするように思われた。そしてあらゆる悲しみも今は喜びの装いをする召し使いのように思われた。苦しんだのはいかに仕合わせなことであるか。彼らの不幸は今や彼らの幸福に曙《あけぼの》の色を与えていた。ふたりの愛の長い苦悶《くも
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