派の謹厳なる学者[#ここで割り注終わり])のようになろうということだ。そしてお前たちは、そういう威容をばかり保ってついにどうなるか知ってるのか。ただ矮小《わいしょう》になるばかりだ。よく覚えておくがいい、快活は単に愉快であるばかりでなく、また偉大である。だから快活に恋をするがいい。結婚するなら、熱情と無我夢中と大騒ぎと混沌たる幸福とをもって結婚するがいい。教会堂でしかつめらしくしてるのもよいが、弥撒《みさ》がすんだら、新婦のまわりに夢の渦巻《うずま》きを起こさしてやるがいい。結婚は堂々としていてしかも放恣《ほうし》でなくちゃいかん。ランスの大会堂からシャントルーの堂まで練り歩かなくちゃいかん。元気のない婚礼は思ってもいやだ。少なくともその当日だけは、オリンポスの殿堂にはいった気でなくてはね。神々になった気でなくてはね。ああみんなして、空気の精や遊びの神や笑いの神や銀楯の精兵などになるがいい。小鬼になるがいい。結婚したての者は皆アルドブランディニ侯([#ここから割り注]訳者注 十七世紀の初めに見いだされた華麗な結婚図の古い壁画の主人公[#ここで割り注終わり])のようでなくちゃいけない。生涯にただ一度のその機会に乗じて、白鳥や鷲と共に火天まで舞い上がっていくんだ。そして翌日また中流市民の蛙《かえる》の中に落ちてこないですむようにしなくちゃいけない。結婚について倹約したり、その光輝をそぐようなことをしてはいけない。光栄の日にけちけちするものではない。婚礼は世帯ではない。わしの思いどおりにやれたら、実にみやびなものになるんだがな。木立ちの中にはバイオリンの音を響かしてやる。計画と言っては、空色と銀だ。儀式には田野の神々をも並べてみせる。森の精や海の精をも招きよせてみせる。アンフィトリテ([#ここから割り注]訳者注 海の女神[#ここで割り注終わり])の婚礼、薔薇色《ばらいろ》の雲、髪を結わえた素裸の水の精ども、女神に四行詩をささげるアカデミー会員、海の怪物に引かれた馬車。
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トリトン([#ここから割り注]海の神[#ここで割り注終わり])は先に駆けりつ、法螺《ほら》の貝もて
人皆を歓喜せしむる楽を奏しぬ。
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これが儀式の目録だ、目録の一つだ。さもなくばわしはもう何にも知らん、断じて!」
祖父が叙情詩熱に浮かされて、自ら自分の言葉に
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