などがいる。みな熱烈な連中だがすぐにさめやすい。僕は彼らの最近の様子がどうも腑《ふ》に落ちない。何か考えを別の方に向けてるらしい。熱が消えかかってるらしい。いつもドミノ遊びばかりをやって時間をつぶしてる。確乎《かっこ》たる言葉を少し聞かしてやりに行くのが急務だ。彼らが集まるのはリシュフーの家だ。十二時から一時までの間は皆そこにいる。その灰を吹き熾《おこ》してやらなければいけない。僕はそれをあのマリユスの夢想家にやらせるつもりだった。彼は結局役に立つ男だ。しかしもうやってこない。だれかメーヌ市門へ行くべき者がいるんだが、もうひとりも残っていない。」
「僕がいる、僕が残ってる。」とグランテールが言った。
「君が?」
「僕がだ。」
「君が共和派の者らを教育するって! 君が主義の名において冷えた魂をまた熱せさせるつもりか!」
「どうしていけないんだ。」
「君がいったい何かの役に立つことができるのか。」
「なに僕にも少しは野心があるさ。」とグランテールは言った。
「君は何の信念も持たないじゃないか。」
「君を信仰してるよ。」
「グランテール、君は僕の用をしてくれるか。」
「何でもやる。靴をみがい
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