あたかも「君のお上さんはどうだね」とでもいうような調子で、「暴動はどうだね?」と口に上《のぼ》していた。
モロー街の一道具屋は尋ねた、「ところで、いつ攻撃するのかね?」
またある商人は言った。
「間もなく攻撃が始まるんだね。わしは知ってるよ。一カ月前にはお前さんたちは一万五千人だったが、今ではもう二万五千人になってるじゃないか。」――そして彼は自分の銃を提供した。するとその隣の者は、七フランなら売ろうとしていた小さなピストルを一つ提供した。
その上、革命の熱がひろがっていた。パリーの一地点として、またフランスの一地点として、その熱を免れてる所はなかった。動脈は至る所に高く鼓動していた。ある種の※[#「火+欣」、第3水準1−87−48]衝《きんしょう》から起こって人体のうちにできてくるあの皮膜のように、各種の秘密結社の網の目は全土にひろがり始めていた。公然でまた同時に秘密のものであった民衆の友の結社から、ドロア・ド・ロンム結社が生まれた。この結社の日程録の一つにはこういう日付があった、共和暦四十年雨月[#「共和暦四十年雨月」に傍点]。そしてそれは高等法院の解散命令布告の後までも存続
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