深き者らは、徐々に読み解いてその正文をもたらすが、その時はもう疾《と》くに仕事はなされてしまっている。公衆の巷《ちまた》には既に多くの翻訳ができている。その各翻訳から一党派が生まれ、各誤訳から一徒党が生まれている。そして各党派はおのれのみが唯一の正文を有していると信じ、各徒党はおのれのみが光明を有していると信じている。
 しばしば権力それ自身も一つの徒党にすぎないことが多い。
 革命のうちには流れにさかのぼって泳ぐ者がいる。それは旧党の者らである。
 神の恵みによって世襲権に執着してる旧党の者らに言わすれば、革命は背反の権利から生ずるものであるから、人はまた革命に背反するの権利をも持っていることになる。しかしそれは誤りである。なぜなれば革命のうちにあっては、背反する者は人民ではなくして王だからである。革命はまさしく背反の反対である。あらゆる革命は皆順当なる遂行であるゆえに、そのうちには正法が含まっている。その正法は、時として似而非《えせ》革命家らによって汚名を負わせらるることもあるが、しかしたとい汚されようとも存続するものであり、たとい血にまみれようとも生きながらえるものである。革命は
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