るや、こんどは権力を考えなければならない。
 その点まではなお賢者は巧者を離れない、しかし既に互いに軽侮し始める。権力もよし、しかし第一に権力とは何ぞや、第二に権力はどこから来るか?
 そうつぶやかれる異議に巧者は耳を貸さないがようである、そしてなおおのれの仕事を続ける。
 おのれに有利な虚構の上に必要の仮面を着せるに巧みなそれら政治家の言によれば、一民衆が君主政の大陸に属する以上は、それが革命の後に第一に要するところのものは、すなわち一王朝をいただくことである。彼らは言う、かくして該民衆は革命の後に平和を得ることができる、換言すれば、傷を包帯し家を修復するの暇を得ることができる。王家は家の足場を隠し負傷者の病院を庇護《ひご》してくれる。
 しかるに、一王朝を迎えることは常に容易の業《わざ》ではない。
 厳密に言えば、だれにても天才ある者は、あるいはだれにても幸運なる者は、王たるに足りる。第一例にはボナパルトがあり、第二の例にはイツルビデ([#ここから割り注]訳者注 メキシコの将軍にて一八二二年に自ら皇帝となりし人[#ここで割り注終わり])がある。
 しかしながら、いずれの家系といえど
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