だ。[#ここで割り注終わり])ところが、隠語は横から口を出してこう答える、「chandelle([#ここから割り注]蝋燭[#ここで割り注終わり])ではない、camoufle というのだ。」かくて日常の言語は、平手打ちの同意義語に camouflet(戯れに人の顔に吹きかける濃煙)というのを置いている。そして下部から上部への一種の浸透力によって、また不可測な道をたどる比喩の助けによって、隠語は洞窟《どうくつ》からアカデミーまでのぼってゆく。J'allume ma camoufle.([#ここから割り注]俺は蝋燭をつける[#ここで割り注終わり])といっていた盗賊プーライエは、アカデミー会員のヴォルテールに次のような文句を書かせる。〔Langleviel La Beaumelle me'rite cent camouflets.〕([#ここから割り注]ラングルヴィエル・ラ・ボーメルには百の平手打ちを喰わすべし。[#ここで割り注終わり])
 隠語のうちを掘りゆけば、一歩ごとに発見物がある。この不思議な語法を研究し掘り深めてゆくと、ついには正規の社会とのろわれた社会との接触点に達する。
 隠語は囚人となった言語である。
 人の思考力がいかに底深い所につき落とされているか、そこで宿命の暗澹《あんたん》たる暴虐からいかにむごたらしく引きずられ縛り上げられているか、その深淵《しんえん》の中でいい知れぬ鈎《かぎ》にいかにしかと結び止められているか、それを見ては心おびえるほどである。
 ああ、みじめなる者らのあわれなる思想よ!
 悲しいかな、この影のうちにある人の魂をだれも救いにこないのであろうか。精神を、救済者を、ペガサス([#ここから割り注]翼馬[#ここで割り注終わり])やヒポグリフ([#ここから割り注]鷲頭怪馬[#ここで割り注終わり])などに乗った広大な騎者を、両翼をひろげて蒼天からおりて来る曙《あけぼの》の色に輝いた戦士を、燦然《さんぜん》たる未来の騎士を、かかる宿命は永遠に待っていなければならないのであろうか。理想の光明の槍《やり》に向かって救いを求むる声も、ただいたずらに響くのみであろうか。ドラゴン(竜)の頭が、泡《あわ》を吐く顎《あご》が、獅子《しし》の爪《つめ》と鷲《わし》の翼と蛇《へび》の尾とでうねり行く怪物が、悪の深淵の深みのうちを恐ろしく渡りくる音を聞き、恐るべき水
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