近所から離れた家で、庭の古い鉄門は腐っており、女ばかりだ。」
「なるほど。それがどうしていけねえんだ?」とテナルディエは尋ねた。
「お前の娘のエポニーヌが調べに行ったんだ。」とバベが答えた。
「ところがマニョンの所にビスケットを持ってきたんだ。」とブリュジョンは言い添えた。
「あれはとうていだめだ。」
「あの娘はばかじゃねえ。」とテナルディエは言った。「だが一応調べてやろう。」
「そうだ、そうだ、」とブリュジョンは言った、「一応調べるがいい。」
 その間、彼らはだれもガヴローシュをもう気にも止めていなかった。ガヴローシュは彼らの話の間、板塀《いたべい》の標石の一つに腰掛けて、しばらくじっとしていた。おそらく親父《おやじ》がふり向いてくれるのを待っていたのであろう。それから彼は靴《くつ》をはいて言った。
「すんだのかい、もう用はねえのかい、おい大人《おとな》たち。どうにかきりぬけたってわけだな。じゃあ俺《おれ》は行くよ。子供《がき》どもを起こしに行ってやるかな。」
 そして彼は立ち去った。
 五人の男はひとりひとり板塀から出た。
 ガヴローシュがバレー街の曲がり角《かど》に見えなくなると、バベはテナルディエをわきに呼んだ。
「お前はあの小僧をよく見たか。」と彼は尋ねた。
「どの小僧?」
「壁に上ってお前に綱を渡したあの小僧だ。」
「よかあ見ねえ。」
「俺《おれ》にもよくわからねえが、何だかお前の息子らしかったぜ。」
「ほう、」とテナルディエは言った、「そうかね。」
 そして彼は向こうへ立ち去っていった。
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   第七編 隠語


     一 起原

 Pigritia([#ここから割り注]怠惰[#ここで割り注終わり])とは恐るべき言葉である。
 この言葉から、〔Pe`gre〕 すなわち盗賊という一つの社会と 〔pe'grenne〕 すなわち飢餓という一つの地獄とが生まれて来る。
 かくして怠惰は母である。
 この母に、盗賊というひとりの息子と飢餓というひとりの娘とがある。
 我々はここに argot([#ここから割り注]隠語[#ここで割り注終わり])の世界のことを説いているのである。
 隠語とは何であるか? それは同時に国民にしてまた特殊語である。それは人と言葉と両形式の下にいう盗賊である。
 三十四年前、この厳粛なまた陰惨な物語の作者([#ここから
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