しい狂気じみたものがあった。ジャヴェルは「さあ、早く!」というよりもむしろ、「さあやく!」と言ったようだった。いかなるつづりをもってしても、それが発せられた調子を写すことはできないほどだった。それはもはや人間の言葉ではなく、一種の咆哮《ほうこう》だった。
彼は慣例どおりのやり方をしなかった。一言の説明も与えず、拘引状をも示さなかった。彼の目にはジャン・ヴァルジャンは一種不思議なとらえ難い勇士であって、五年間手をつけながらくつがえすことのできなかった暗黒な闘士であるように見えた。その逮捕は事の初めではなく終局であった。彼はただ「さあ、早く!」とだけ言った。
そう言いながらも彼は一歩も進まなかった。彼はいつも悪党らを自分の方へ手荒らく引きつけるあの目つきを、鉤索《かぎなわ》のようにジャン・ヴァルジャンの上に投げつけた。
二カ月以前ファンティーヌが骨の髄まで貫かれたように感じたあの目つきが、やはりそれであった。
ジャヴェルの叫ぶ声に、ファンティーヌは目を開いた。しかしそこには市長さんがいる、何を恐《こわ》がることがあろう?
ジャヴェルは室のまんなかまで進んだ、そして叫んだ。
「さあ
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