のうちにあったに違いなかった。
彼は近くの屯所《とんしょ》から一人の伍長と四人の兵士とを請求し、それを中庭に残して置き、ただ簡単にやってきたのだった。彼は門番の女からファンティーヌの室を聞いた。門番の女は兵士らが市長を尋ねてくるのは見なれていたので、別に怪しみもしなかったのである。
ファンティーヌの室にくると、ジャヴェルは取っ手を回し、看護婦かあるいは探偵のようにそっと扉《とびら》を押し開き、そしてはいってきた。
厳密に言えば彼は中にはいったのではなかった。帽子をかぶったまま、頤《あご》までボタンをかけたフロックに左手をつき込み、半ば開いた扉の間に立っていたのである。曲げた腕の中には、後ろに隠し持った太い杖の鉛の頭が見えていた。
彼はだれにも気づかれずに一分間ばかりそうしていた。と突然ファンティーヌが目をあげて、彼を見、マドレーヌ氏をふり向かしたのだった。
マドレーヌの視線とジャヴェルの視線とが合った時、ジャヴェルは身をも動かさず位置をも変えず近づきもしないで、ただ恐るべき姿になった。およそ人間の感情のうちで、かかる喜びほど恐るべき姿になり得るものはない。
それは実に、地獄
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