せになるのをよく知っています。夜通し私は、何か白いものを、そして私に笑いかけてる人たちを見ました。先生のおよろしい時に、私のコゼットを抱いてきて下さいませ。私はもう熱はありません、なおってるんですもの。もう何ともないような気がしますわ。けれど、病人のようなふうをして、ここの御婦人方の気に入るように動かないでおりましょう。私が静かにしてるのを御覧なすったら、子供に会わしてやるがいいとおっしゃって下さいますでしょう。」
マドレーヌ氏は寝台のそばにある椅子《いす》にすわっていた。ファンティーヌは彼の方に顔を向けた。彼女はまるで子供のような病衰のうちに、自分でも言ったとおり、静かにそして「おとなしく」しているのを見せようと明らかに努力をしていた。そして自分が穏やかにしているのを見たらだれもコゼットを連れて来るのに反対しないだろうと、思っているらしかった。けれども、自らそうおさえながらも、彼女はマドレーヌ氏にいろいろなことを尋ねてやまなかった。
「市長様、旅はおもしろうございましたか。ほんとに、私のために子供を引き取りに行って下さいまして、何という御親切でしょう。ただちょっと子供の様子をきかし
前へ
次へ
全639ページ中608ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング