れ以上法廷を乱すことは欲しません。」とジャン・ヴァルジャンは言った。「諸君は私を捕縛されぬゆえ、私は引き取ります。私はいろいろなすべき用を持っています。検事殿は、私がどういう者であるか、私がどこへ行くかを、知っていられる。いつでも私を捕縛されることができるでしょう。」
彼は出口の方へ進んで行った。一言声を発する者もなく、手を差し延べて引き止めようとする者もなかった。皆身を遠ざけた。群集をして退かしめ一人の前に道を開かしむるある聖なるものが、その瞬間のうちにあった。彼はおもむろに足を運んで人々の間を通って行った。だれが扉《とびら》を開いたか知る者はなかったが、彼がそこに達した時扉は確かに開かれていた。そこまで行って、彼はふり返って言った。
「検事殿、御都合でいつでもよろしいです。」
それから彼は傍聴人の方へ向かって言った。
「諸君、ここに列席された諸君、諸君は私をあわれむに足るべきものと思われるでしょう。ああしかし私は、こういうことをなそうとする瞬間の自分がいかようであったかと思う時、自分はうらやむに足るべきものと思います。しかしながら、かような事の起こらなかった方を私はむしろ望みた
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