アラスの重罪裁判を統《す》べていたドゥーエーの控訴院判事は、かくも広くまた尊敬されてる彼の名を、世間の人と同じくよく知っていた。守衛が評議室から法廷に通ずる扉《とびら》をひそかに開いて、裁判長の椅子《いす》の後ろに低く身をかがめ、前述の文字がしたためてある紙片を彼に渡して、「この方が法廷にはいられたいそうです[#「この方が法廷にはいられたいそうです」に傍点]、」とつけ加えた時に、裁判長は急に敬意ある態度を取って、ペンを取り上げ、その紙片の下に数語したためて、それを守衛に渡して言った、「お通し申せ。」
われわれがここにその生涯を述べつつあるこの不幸な人は、守衛が去った時と同じ態度のままで同じ場所に、広間の扉《とびら》のそばに立っていた。彼は惘然《ぼうぜん》と考えに沈みながら、「どうぞこちらへおいで下さい、」とだれかが言うのを聞いた。先刻は彼に背を向けて冷淡なふうをした守衛が、今は彼に向かって低く身をかがめていた。と同時に彼に紙片を渡した。彼はそれを開いた。ちょうど近くにランプがあったので、彼は読むことができた。
「重罪裁判長はマドレーヌ氏に敬意を表し候《そうろう》。」
彼はその数
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