でさ。」
「繩《なわ》で輻《や》を縛ったら?」
「輻はそれでいいでしょうが、轂《こしき》はそういきません。その上|※[#「車+罔」、第3水準1−92−45]《たが》もいたんでます。」
「町に貸し馬車屋はいないのか。」
「いません。」
「ほかに車大工はいないのか。」
 馬丁と親方とは頭を振って同時に答えた。
「いません。」
 彼は非常な喜びを感じた。
 それについて天意が働いていることは明らかであった。馬車の車輪をこわし、途中に彼を止めたのは、天意である。しかも彼はその最初の勧告とでもいうべきものにすぐ降伏したのではなかった。あらゆる努力をして旅を続けようとした。誠実に細心にあらゆる手段をつくしてみた。寒い季節をも疲労をも入費をも、意に介しなかった。彼はもはや何ら自ら責むべきところを持ってはいなかった。これ以上進まないとしても、それはもはや彼の責任ではなかった。それはもはや彼の罪ではなかった。彼の本心の働きではなく、実に天意のしからしむるところであった。
 彼は息をついた。ジャヴェルの訪問いらい初めて、自由に胸いっぱいに息をした。二十時間の間心臓をしめつけていた鉄の手がゆるんできたような
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