いた。そしてそれが一つの町であることに気づいた。どの街路にもだれもいなかった。どの家の戸も皆開かれていた。生きてる者は一人として、街路を通る者もなければ、室の中を歩いてる者もなければ、庭を散歩してる者もなかった。けれども、壁の角の後ろや、扉の後ろや、樹木の後ろには、いつも黙って立っている男がいた。そして一度にただ一人いるきりであった。それらの男たちは私が通ってゆくのをじっと見ていた。
私はその町から出て、野を歩き初めた。
しばらくしてふり返ってみると、私の後《あと》から大勢の人がついてきていた。その人たちは皆、私が町で見た男であることがわかった。彼らは不思議な顔をしていた。彼らは別に急いでいるとも見えなかったが、私より早く歩いていた。歩きながら少しの音も立てなかった。すぐにその人たちは私に追いついて、私を取り囲んだ。彼らの顔は皆土色をしていた。
その時、町にはいって私が最初に出会って尋ねたあの男が、私に言った。「君はどこへ行くんですか。君はもう長い前から死んでるということを知らないのですか。」
私は返事をするために口を開いた。すると、自分のまわりにはだれもいないのに気がついた。
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