た。彼はその二つの大時計が十二打つ音を数えた。そしてその二つの鐘の音を比較してみた。その時彼は、ある金物屋で数日前に見た売り物の古い鐘の上に、ロマンヴィルのアントアーヌ[#「ロマンヴィルのアントアーヌ」に傍点]・アルバン[#「アルバン」に傍点]という名前が刻まれていたのを思い出した。
彼は寒気《さむけ》がした。そして少し火をたいた。窓をしめることには気がつかなかった。
そのうちに彼は昏迷《こんめい》の状態にまた陥っていた。十二時を打つ前に考えたことを思い出すのに、かなりの努力をしなければならなかった。ついにそれが思い出せた。
「ああそうだ、」と彼は自ら言った、「私は自首しようと決心したのであった。」
それから突然彼はファンティーヌのことを考えた。
「ところで、」と彼は言った、「あのかわいそうな女は!」
そこにまた新しい危機が現われた。
彼の瞑想《めいそう》のうちに突然現われたファンティーヌは、意外な一条の光のごときものであった。彼には自分のまわりのすべてがその光景を変えたように思われた。彼は叫んだ。
「ああ私は今まで自分のことしか考えなかった。私は自分一個の都合ばかりしか考え
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