ろう、その光はますますやみを濃くなすのみであろう、引き裂かれた幕はなおいっそう秘密を増させるであろう、その地震はかえって建物を堅固にするであろう、その異常なでき事は、もし彼が欲するならば、彼の存在を同時にいっそう明らかにしいっそう不可測ならしむるという以外の結果はきたさないであろう、そして、そのジャン・ヴァルジャンの幻と面を接することによって、りっぱな一個の市民たるマドレーヌ氏はいよいよ光栄と平和と尊敬とを得るに至るであろう――そうだれかが彼に向かって言ったとしても、彼は頭を振って、それらの言葉を狂人の戯言となしたであろう。しかるにそれらのことがまさしく起こったのである。すべてそれらの不可能事と思われたことは事実となった。そして神は、それらの荒唐事が現実の事となるのを許したもうたのであった。
彼の妄想《もうそう》はますます明るくなってきた。彼は漸次に自分の立場を了解してきた。
彼は何かある眠りからさめたような気がした。そして、立ちながら、震えながら、いたずらに足をふみ止めようとしながら、暗黒のうちに急坂を深淵の縁まですべり落ちてゆくような思いをした。彼はやみの中に、見知らぬ一人の男
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