のだった。
しゃれ者はその間に逃げてしまった。
十三 市内警察の若干問題の解決
ジャヴェルは見物人をおしのけ、群集の輪を破り、後ろにその惨めな女を従えて、広場の一端にある警察署の方へ大|股《また》に歩き出した。女はただ機械的にされるままになっていた。二人とも一言も口をきかなかった。多くの見物人はひどくおもしろがって、ひやかし半分について行った。極端な悲惨は卑猥心《ひわいしん》の的となる。
警察は天井の低い室で、暖炉がたいてあり、番兵がひかえていて、鉄格子にガラスのはまった戸が往来の方についていた。そこに着くと、ジャヴェルはその戸を開き、ファンティーヌとともに中にはいって、後ろに戸をしめてしまった。やじ馬はいたく失望したが、中を見ようとして、爪立ちながら警察署のよごれたガラス戸の前に首を伸ばした。好奇心は一の貪食《どんしょく》である。見ることはすなわち食うことである。
中にはいるとファンティーヌは、恐《こわ》がってる犬のように片すみに縮こまって、身動きもしなければ口もきかなかった。
署詰めの下士が蝋燭《ろうそく》をともしてきてテーブルの上に置いた。ジャヴェルは腰を
前へ
次へ
全639ページ中411ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング