いたらどんなにかしあわせであろうものを。彼女は娘を呼び寄せようと思った。けれどもそれでどうしようというのか! 娘に困窮を分かち与ようというのか。それからテナルディエにも負債になっている。どうして払われよう。そしてまた旅。その費用は?
彼女に貧乏生活の教えとでもいうべきものを与えてくれた婆さんは、マルグリットという聖《きよ》い独身者で、りっぱな信仰を持ち、貧乏ではあるが、貧しい者のみでなく金持ちに対してまで恵み深く、マルゲリト[#「マルゲリト」に傍点]と署名するだけのことはりっぱに知っており、また学問としては神を信ずることを知っていた。
かかる有徳の人が下界にも多くいる。他日彼らは天国に至るであろう。かかる生命は未来を有しているものである。
初めのうちファンティーヌは、非常に恥ずかしがってなるべく外へも出なかった。
通りに出ると、皆が後ろから振り返って自分を指さすのを彼女は気づいていた。皆が彼女をながめてゆくが、あいさつする者は一人もなかった。通りすぎる人々の冷ややかな鋭い軽蔑は、朔風《きたかぜ》のように彼女の肉を通し心を貫いた。
小都市においては、一人の不幸な女がいる時、その
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